放射線療法
目次
- 監修
- 群馬大学大学院医学系研究科 泌尿器科学分野
教授 鈴木 和浩 先生
放射線療法とは
放射線療法は、前立腺に放射線を照射して、がん細胞を死滅させる治療法です。
手術療法と同様、がんが前立腺内にとどまっている病期 I 、II 期の患者さんが対象となります。病期 III 期の場合は、ホルモン療法と併用して行うことになります。
放射線療法は、手術療法に比べて身体的負担が少なく、手術を行うことができない70歳以上の患者さんにも行うことができます。
また、放射線療法はがんを死滅させる目的だけでなく、転移したがんによる痛みを除くことを目的として行うこともあります。
放射線療法には、体外より治療を行う「外部照射療法」と、前立腺組織内に放射線源を挿入する「組織内照射療法」の2つの方法があります。
外部照射療法
現在行われている放射線療法のほとんどは、体の外から放射線を照射する外部照射療法です。我が国で可能な外部照射療法には多門照射、3次元原体照射、強度変調放射線治療、粒子線治療(陽子線、重粒子線)があります。
外部照射療法は入院の必要がなく、外来で治療を受けることができます。通常、1日1回週5回照射し、約1ヵ月半程度の治療期間が必要になります。
外部照射療法では、前立腺だけでなく周辺の臓器にも放射線があたるため、副作用として、直腸粘膜の潰瘍や出血、膀胱、尿道への影響、勃起障害などが起こる可能性があります。
外部照射療法:ライナック
群馬大学大学院 放射線腫瘍教室 中野隆史教授 ご提供
組織内照射療法
現在、我が国において行われている組織内照射療法には、前立腺に放射線の小線源(ヨウ素125)を永久的に埋め込み、そこから放射線を前立腺に照射し、周辺のがん細胞を死滅させる治療法(低線量率永久挿入組織内照射法)と、一時的に前立腺内に針を刺入し、高エネルギーの放射線(イリジウム192)を前立腺内に照射する治療法(高線量率組織内照射法)があります。
低線量率永久挿入組織内照射法は、通常、数ミリの小線源50~80本程度を、会陰部から前立腺に埋め込んでいきます。3~4日程度の入院が必要になります。
外部照射療法に比べて、周辺の臓器への照射量を抑えることができるため、合併症が少なく、勃起障害も比較的少ないことが利点になります。
線源を挿入するための装置
線源を挿入しているところ
小線源(ヨウ素125)挿入後の骨盤部単純X線画像
重粒子線治療
放射線の中で電子より重いものを粒子線、ヘリウムイオンより重いものを特に重粒子線と呼びます。重粒子線治療には、(1)エックス線に比べて、がん病巣に集中して照射される(2)エックス線に比べて生物活性が強く、一般の放射線が効きにくいがんにも効く(3)短い期間で治療できる、という特徴があります。
群馬大学重粒子線治療施設内には、イオン発生装置、約6mの直線加速器、直径約20mのシンクロトロン、さらに治療室があり、大きな建物を必要とします(図1)。
前立腺がんは重粒子線治療の適応がんであり、限局がんに対しては重粒子線単独療法が、局所進行がんに対してはホルモン療法との併用療法がおこなわれます。
※重粒子線治療は保険適用が認められており、高額療養費制度も利用できます。
重粒子線治療施設の鳥瞰図
出典:(財)群馬健康医学振興会、群馬大学同窓会刀城くらぶ編
重粒子線切らずに治すがん治療と医療最前線