治療による主な合併症と
その対策

監修
群馬大学大学院医学系研究科 泌尿器科学分野
教授 鈴木 和浩 先生

主な合併症とその対策

前立腺がんの治療では、手術療法、放射線療法およびホルモン療法のいずれの治療にも合併症が起こる可能性があります。
とくによくみられるのは「尿漏れ」と「勃起障害」で、これらは生活していく上で問題となり、患者さんを悩ませることになります。
これらの合併症には有効な改善策もあるため、ひとりで悩まずに主治医に相談してみましょう。

尿漏れ

前立腺全摘除術や放射線療法の際に、前立腺の周囲の神経や筋肉が傷つくことがあります。排尿コントロールは、尿道括約筋や骨盤底筋などによって行われていますが、これらが傷害されると、尿道がきちんと閉まらなくなるため、尿漏れが起こることになります。

尿漏れの改善には、骨盤底筋を強化する「骨盤底筋体操」が有効です。これは骨盤底筋を鍛えながら尿道括約筋の機能回復をはかる体操です。毎日続けることで、尿道や肛門が引き締まり、しだいに尿漏れの頻度は少なくなっていくはずです。

骨盤底筋体操

【1】あおむけに寝て
【1】あおむけに寝て
足を肩幅に開き、ひざを少し立てて肛門をキューっとしめたまま、5つ数える。
【2】ひざとひじを床につける
【2】ひざとひじを床につける
足を肩幅に開き、手を肩幅に開いて机の上につき、体重をのせる。肩とおなかの力を抜き、肛門だけをキューっとしめる。
【3】机にもたれて
【3】机にもたれて
足を肩幅に開き、ひざを少し立てて肛門をキューっとしめたまま、5つ数える。
【4】いすに座って
【4】いすに座って
床につけた足を肩幅に開き、背筋を伸ばす。肩とおなかの力を抜き、肛門をゆっくりキューっとしめあげる。

勃起障害

前立腺全摘除術や放射線療法によって、前立腺の左右にある勃起に関係する神経が傷害された場合、勃起障害が起こることがあります。また、ホルモン療法では男性ホルモンの分泌やその作用が低下してしまうため、勃起障害の発生は少なくありません。

勃起障害は、経口の勃起不全治療剤などにより治療することができます。
勃起不全治療剤は、心臓が悪い人、血圧が高い人や低い人などが使用すると、重篤な副作用があらわれる危険性があるため、服用を希望する場合には、主治医とよく相談してから使用するようにしてください。