がんと向き合う
こころの道しるべ
目次
- 監修
- 群馬大学大学院医学系研究科 泌尿器科学分野
教授 鈴木 和浩 先生
落ち込んで、あたりまえ
「がん」と診断され、がんと向き合って暮らすことは、とても大きなストレスとなります。
がんと向き合った方を対象とした2003年の調査では、悩みや負担の内容について尋ねたところ、「不安などのこころの問題」という回答が、全体の約半数を占めていました。
がんと向き合う生活のなかでこころが不安定になることは、多くの方が経験しています。
無理にがんばったり、不安定になっている自分を責める必要はありません。
がんと上手に向き合うための道しるべ
ここでは、ストレスを抱えながらも、がんと向き合おうとする患者さんに向け、患者さんがより上手にがんと向き合うための11の道しるべをご紹介いたします。
11の道しるべ ~がんと上手に向き合うために~
『なぜ病気になったのか考えてしまうとき』
- 1.
- 自分や周囲を責めるのはやめましょう。
がんになったのは誰のせいでもありません。がんになった原因を最後までつきとめるのは、現在の科学では困難です。
『死を思い浮かべてしまうなら』
- 2.
- 「がんイコール死」と思い込まないようにしましょう。
医療の進歩はめざましいものです。「がんイコール死」という考えは、必ずしも正しいものではなくなってきています。
『病気のことがよく分からなくて不安なら』
- 3.
- あなたのがんについての知識を集めて整理してみましょう。
自分のがんや治療のことを正しく理解できていますか? 難しいと思ったら、主治医や医療関係者に質問してみましょう。持っている情報を理解してまとめることが大切です。
『治療や副作用のことが気になるなら』
- 4.
- 主治医とは納得できるまで話し合い、信頼関係を築きましょう。
主治医は、あなたの病気の状態を一番よく知っている頼もしいパートナーです。お互いが合意し納得することで、積極的に治療に取り組むことができます。
『気持ちが落ち込んでしまったら』
- 5.
- こころの中にあることを、周囲の親しい人にありのまま話してみましょう。
ひとりで悩んだり、イライラしていないで、家族でも友だちでも、あなたがこころを許せる人に、今のあなたのこころのなかにあることを十分に話してください。話すことで気持ちが整理されたり、解決しないことでも話すだけで楽になったりすることも多いようです。
『落ち込みが長く続くとき』
- 6.
- 落ち込みが長く続く場合は、早めに専門的なこころのケアを受けましょう。
がんとの生活ではこころが不安定になりやすいものです。しかし、食事や睡眠などの日常生活に支障がある状態が長く続く場合には、思いきって専門的なこころのケアを受けることが大切です。主治医に相談してみましょう。
『ひとりぼっちだと感じたら』
- 7.
- あなたを支えてくれる人たちとのつながりを強くしましょう。
主治医や看護師だけでなく、あなたの周りにいる家族・友だち・患者仲間・同僚たちとのつながりを大切にしましょう。心理的な援助や現実的な援助は、あなたに力を与えてくれます。また、社会的サポートも活用しましょう。
『リラックスするために』
- 8.
- リラックスする方法を身につけましょう。
不安感や恐怖感が長く続くと、心身の緊張状態がいっそう高まることが多いようです。腹式呼吸や簡易自律訓練、イメージ療法など身体をリラックスさせる方法を身につけて、心身の緊張状態をやわらげましょう。
『自分の言いたいことを我慢しているとき』
- 9.
- イヤなことは「イヤ」と断る勇気をもちましょう。
我慢しなくても良いのです。自分の言いたいことを言わずに我慢するのは、ストレスの原因になります。
『これからのことを考えるとき』
- 10.
- 自分らしさを大切にがんと向き合いましょう。
がんは、長くつき合っていく病気になってきました。あなた自身に合ったがんとの向き合い方を見つけてください。
『今後迷いのない生き方をしていくために』
- 11.
- 「目標」だけでなく「方向性」や「価値観」を見つけていきましょう。
いったん達成されて消滅してしまう「目標」だけでなく、一生涯、続くような「価値観」や「方向性」を決めていきましょう。
※アストラゼネカ株式会社発行
「こころの道しるべ」より一部改変
社会的サポートを活用しましょう
さまざまな社会的サポート
- 病院のソーシャルワーカー
- 医療経済的なことや、在宅治療の医師やヘルパーの確保、復職のアドバイスやカウンセリングなどの窓口となっています。
- 保健所や保険福祉事務所、市町村の保健センター
- 地域の支援プログラムやヘルパー派遣など福祉サービスの相談を受けています。
全国各地の診療連携拠点病院にある「相談支援センター」
- 病院のソーシャルワーカー
- 相談支援センターは、全国各地の診療連携拠点病院にあります。がん専門相談員としての研修を受けたスタッフが、信頼できる情報に基づいて、がんの治療や療養生活全般の質問や相談を受けています。その病院の患者さんやご家族だけでなく、地域の方ならどなたでも利用できます。
- こんなとき、お近くの相談支援センターを活用してみましょう。
- ・がんについて知りたい、もっと理解したい
・納得のいく治療を受けるため、治療について理解したい
・自分の思いや考えを医療関係者にどのように伝えたら良いのか分からない
・療養生活について不安や困ったことがある
・こころの悩みを誰かに聞いて欲しい
・生活や経済的なことで心配がある
・家族への伝え方や、家族の落ち込みについて相談したい
・家族だけで相談したい
※相談支援センターは、主治医に代わって治療について判断するところではありません。