すぐわかるPSA検査

目次

監修
群馬大学大学院医学系研究科 泌尿器科学分野
教授 鈴木 和浩 先生

PSA検査は、どんな検査?

前立腺がんの可能性があるかどうかが分かる

PSA検査は、スクリーニング検査のひとつです。スクリーニング検査とは、前立腺がんの可能性がある人を見つけるための検査のことです。

採血による検査

前立腺がんの診断では、まず血液検査で血中PSA値を調べます。PSAとは、前立腺特異抗原というタンパク質分解酵素のことで、前立腺がんや前立腺肥大、炎症があるとPSAの分泌腺が壊れて血液中にPSAが大量に漏れ出します。このため血中PSA値が高くなる場合は、前立腺がんに限らず「何らかの病気や傷がある」可能性が疑われます。

前立腺がんと確定するわけではない

PSAの値が高くなるにつれ、前立腺がんである確率も高くなっていきますが、年齢により基準値が設けられています。
PSAの値は、前立腺肥大症や前立腺炎でも高値になることがあるため、基準値以上の値が出ると、専門医を受診し、前立腺がんであるかを確定するためのより詳しい検査を受けることになります。
PSAの値が基準値以上であっても、がんが見つからない可能性もあります。また、死に至らないがんまで見つかって治療を受けることになる、過剰診断・過剰治療のリスクもあります。反対に、治療が必要ながんがあっても、PSA検査では発見できない場合もあります。

年齢階層別基準値による前立腺がん検診のお勧め

年齢 基準値 PSA値
1.0ng/mL以下 1.1ng/mL〜基準値 基準値以上
50〜64 3.0ng/mL以下 3年後の検診 1年後の検診 専門医受診
65〜69 3.5ng/mL以下 3年後の検診 1年後の検診 専門医受診
70〜 4.0ng/mL以下 3年後の検診 1年後の検診 専門医受診

出典:日本泌尿器科学会 ( 編集). 前立腺がん検診ガイドライン
2018 年版. メディカルレビュー社. 2018.を参考に作成

PSA基準値以下の進行がん(PSA陰性がん)を見逃さないためには、直腸内触診を。
人間ドック受診の機会がある方、父、兄弟、子に前立腺がん患者がいる場合は、40歳からの定期検診を。

最近、ポスターなどで「PSA検査」について見かけるのはなぜ?

前立腺がんは、男性のがんのうち最も多いがんで、今後も増加が予想されているがんのひとつです。

がん罹患者数の将来予測

図:がん罹患者数の将来予測

年齢階級別がん死亡 部位内訳(2021年)

年齢階級別がん死亡 部位内訳(2021年)

このような状況から、前立腺がんの早期発見に役立つPSA検査の啓発が進んでいるのです。なお、前立腺がんが増加している主な理由のひとつは、食生活の欧米化です。動物性脂肪・植物油などの過剰摂取は、前立腺がんの危険因子であるといわれています。

PSA検査は、1度受ければ十分?

PSA検査で異常がなくても小さい前立腺がんがかくれている可能性や、将来前立腺がんへと進んでいく可能性もあります。
早期発見のために、一度PSA検査を受けて基準値以下だった方も、その値に応じて定期的に受けることが以下の表の通り勧められています。

年齢階層別基準値による前立腺がん検診のお勧め

年齢 基準値 PSA値
1.0ng/mL以下 1.1ng/mL〜基準値 基準値以上
50〜64 3.0ng/mL以下 3年に1度検査 1年に1度検査 専門医受診
65〜69 3.5ng/mL以下 3年に1度検査 1年に1度検査 専門医受診
70〜 4.0ng/mL以下 3年に1度検査 1年に1度検査 専門医受診

出典:日本泌尿器科学会 ( 編集). 前立腺がん検診ガイドライン
2018 年版. メディカルレビュー社. 2018.を参考に作成

PSA基準値以下の進行がん(PSA陰性がん)を見逃さないためには、直腸内触診を。
人間ドック受診の機会がある方、父、兄弟、子に前立腺がん患者がいる場合は、40歳からの定期検診を。

どこで受けられる?費用はどれくらい?

普段受診していない診療科にわざわざ行く必要はありません。かかりつけ医で受けることができますので、主治医に相談してみると良いでしょう。
なお、前立腺がんの疑いでPSA検査を受ける場合は、保険診療となります。
自覚症状などがなく、検診の一環として受ける場合は、自費診療となります。人間ドックなどのオプションでPSA検査を受ける場合の費用はおおむね2,000円~3,000円、自治体の前立腺がん検診では無料の地区もありますが、500円~2,000円程度の自己負担を設定しているところもあります。
また、結果が出るまでの期間は施設により異なります。その日のうちに分かるところもありますが、1週間程度かかることが多いでしょう。