前立腺がん大辞典

監修
群馬大学大学院医学系研究科 泌尿器科学分野
教授 鈴木 和浩 先生

医療用語は専門家が使うため、一般の方々には耳慣れない言葉が多いと思います。ここでは、がん医療で比較的多くつかわれる用語について説明いたします。

索引

CT検査 [CTけんさ]

体を通り抜けたX線の強弱をコンピュータで計算して体の断面図を得る検査。CTはコンピュータ断層撮影の略。

体の周囲を360度回転するX線発射装置からX線を当てて、コンピュータで処理することにより、1センチから数ミリ間隔の白黒の、体の輪切り画像が得られます。X線の吸収の少ない空気は黒く、吸収の多い骨は白く写ります。病気の診断や進行具合を詳しく調べるときに行う検査です。患者さんは寝台にあおむけに横たわった状態で検査を受け、時間は約5分程度かかります。ふつうのX線検査に比べて、骨のうしろに隠れているがんや臓器の重なりがある部分にあるがんも見つけやすいなど検査の精度が高まるのが利点です。

さらに詳しく調べるために、造影剤を使って検査することもあります。最近では、3次元の立体画像を描くことができるヘリカルCT検査も使われるようになりました。

CRPC [CRPC]

男性ホルモンを抑える治療を行っているにもかかわらず、進行してしまった前立腺がん。

前立腺がんの発生・進行には男性ホルモンが関与しています。そのため、ホルモン療法(内分泌療法)により男性ホルモンの分泌や働きを抑えることで、前立腺がんの進行を抑制する治療が行われます。

しかし、ホルモン療法を続けているうちに、男性ホルモンが抑えられているにもかかわらず前立腺がんが進行してしまう場合があります。このような状態の前立腺がんのことを「CRPC(去勢抵抗性前立腺がん)」といいます。

EBM(Evidence-Based Medicine) [EBM(Evidence-Based Medicine)]

科学的根拠(研究結果から導かれた根拠)に基づき、患者さんの状態や希望、医療者の専門性を考え合わせて、治療方針を決定していく医療のことをいいます。

MRI検査 [MRIけんさ]

磁気を使って体の断面図を描く検査。MRIは磁気共鳴断層撮影の略。

体に強い磁場をかけた状態にすることにより、正常な組織と異常な組織を区別して、断面図を白黒で描き出します。診断に必要な臓器や部位の断面を縦、横、斜めなど自由に撮影でき、立体図を描くこともできます。病気の診断や進行具合を詳しく調べるときに行う検査です。患者さんは寝台にあおむけに横たわった状態で検査を受け、検査にかかる時間は約20~30分程度です。

磁気で悪影響を受けるペースメーカーなどの医療機器を体につけている人は、この検査を受けることができませんので、必ず申し出るようにしてください。その場合は、他の検査を組合わせて診断を進めることになります。

PSA検査 [PSAけんさ]

前立腺がんを早期発見するための検査法。PSAはprostate specific antigen(前立腺特異抗原)の略で、前立腺から分泌されるPSAタンパクという物質が血液中にどれだけ存在するかを測定します。

健常な男性の場合、PSAが血液中に浸出することはほとんどありません。しかし、前立腺に疾患がある場合は血液中にPSAが浸出し、血液検査での測定が可能となります。健常人の血清中PSA濃度は1ミリリットルあたり0.1ナノグラムですが、前立腺疾患があると4.0ナノグラム以上に上昇します。しかし4.0~10.0ナノグラム程度の場合、良性の前立腺肥大症と前立腺がんがかなりの割合で混在しており、区別がつかないことがあります。

前立腺がんのスクリーニングでは、一般的に50歳以上の男性を対象にPSA検査を実施します。その結果、血清中PSA濃度が1ミリリットルあたり4.0ナノグラム以上の場合、専門の泌尿器科医を受診し、直腸指診や超音波検査で針生検の適応を決定します。

PET検査 [PETけんさ]

がん細胞の性質を利用し、活発に活動しているがん細胞の状態を調べる検査のことをいいます。

QOL [QOL]

生活の質や人生の質。クオリティ・オブ・ライフの略。

病気そのものに伴う症状、治療の副作用や後遺症などによって、これまで簡単にできていたことができなくなるなど、生活の質に変化が起こります。その内容は患者さんが個々の生活の中で大切にしていることがらにより様々です。手術後の外見の変化や生活上の困難、薬の治療の副作用の種類によっては今まであたりまえに行えた生活に支障を及ぼし生活の質を低下させることもあり『QOLが低下する』などの表現で用いられます。

治療法を選ぶ際、治療効果だけでなく、治療後も治療前となるべく生活が変わらないためにもQOLが良好に保てるかどうかを考えることも大切です。治療効果がやや低くなる場合でも、患者さんの状況によってはQOLの観点からは望ましいといえる治療法もあります。肺がんで手術を受けた患者さんが、手術後に呼吸困難で苦しむのを避けるために、手術よりも治療効果が少し低くなる可能性があっても、放射線治療を選択することもあり得るわけです。

TNM分類 [TNMぶんるい]

がんの進行度を判定する基準で、国際対がん連合が採用している病期分類。 病期とはがんの進行度を示します。

Tは発生したがんの大きさ・広がり・深さの程度(浸潤)を、Nは周囲のリンパ節へのがんの広がりぐあいを、Mは遠隔転移の有無を数値で示しています。Tは0~4の5段階、Nは0~1の2段階、Mは0と1の2段階の数字を付けて大きく分類する仕組み。0は「無い」ことを表します。