CRPC(去勢抵抗性
前立腺がん)について
目次
CRPC(去勢抵抗性前立腺がん)とは?
CRPC(去勢抵抗性前立腺がん)とは?
CRPC(去勢抵抗性前立腺がん)とは、男性ホルモンを抑える治療を行っているにもかかわらず、進行してしまった前立腺がんです。
前立腺がんの発生・進行には男性ホルモンが関与しています。そのため、ホルモン療法(内分泌療法)により男性ホルモンの分泌や働きを抑えることで、前立腺がんの進行を抑制する治療が行われます。
しかし、ホルモン療法を続けているうちに、男性ホルモンが抑えられているにもかかわらず前立腺がんが進行してしまう場合(再燃)があります。このような状態の前立腺がんのことを「CRPC(去勢抵抗性前立腺がん)」といいます。
なぜCRPCになるの?
前立腺がんは、異なる性質をもつがん細胞が集まってできています。ホルモン療法が効きやすいがん細胞もあれば、効きにくいがん細胞もあります。また、ホルモン療法を続けているうちに、がん細胞が性質を変化させてホルモン療法が効きにくくなることもあります。
このように、ホルモン療法が効きにくいがん細胞が生き残り、増殖することで、CRPCになると考えられています。
転移性のCRPCと診断されました。今後の治療はどのように進んでいきますか?
転移性のCRPCになった場合の次の治療手段として、新規ホルモン療法剤や化学療法剤が検討されます。
また、新規ホルモン療法剤が無効になった場合には、個別化治療や化学療法剤が検討されます。
転移性のCRPCの個別化治療
がん細胞はさまざまな性質があり、その特徴は人によって異なります。個別化治療とは、がん細胞の性質や特徴をもとに、患者さんごとに適した治療法を選択することです。そのため、個別化治療では前もって、「あなたのがん細胞がどんな性質をもっているか」あるいは「あなたのがん細胞に特定の性質があるかどうか」を検査によって調べます。
転移性のCRPCの遺伝子検査とは?
転移性のCRPCでは、「BRCA(ビーアールシーエー)遺伝子」などを検査することで、がんの発生や進行と関連する遺伝子に変異があるかどうかを調べることができます。BRCA遺伝子に変化(変異)が起こっている場合には、患者さんの状態にあった治療法(個別化治療)を選択できる可能性があります。
BRCA遺伝子の変異は、どうやって調べますか?
BRCA遺伝子の変異を調べるための検査は、手術や診断のときに採取したがん組織または血液を用います。手術あるいは診断時のがん組織を使用できない場合は、再度採取を行うことがあります。
BRCA遺伝子変異検査の結果は、家族に影響する?
検査によってBRCA遺伝子に変異があることが判明した場合、お子さんやお孫さんに変異が受け継がれる可能性があります。
BRCA遺伝子変異には、遺伝に関係しているものと、関係しないもの(タバコや食生活などの後天的な要因によって生じたもの)があります。遺伝に関係しない変異は、ご家族には影響しません。
一方、遺伝に関係している変異は、2分の1の確率でお子さんに受け継がれます。ただし、遺伝子変異を受け継いでも必ずがんを発症するわけではありません。
検査で判明した変異が遺伝性かどうかについて、血液を用いた検査で判明した変異は、遺伝に関係しています。一方、がん組織を用いた検査では、検出した変異が遺伝に関係しているかどうかまでは分からず、確認を希望する場合には改めて血液を用いた遺伝子変異検査を行う必要があります。
BRCA遺伝子に変異があった場合に、家族でどのような話し合いが必要ですか?
遺伝に関係しているBRCA遺伝子の変異がある患者さんは、乳がん、卵巣がん、前立腺がんの発症リスク(がんにかかる可能性)が、一般より高いといわれています。この性質は、性別を問わずお子さんやお孫さんに受け継がれます。
検査結果が陽性であった場合は、この結果をもとに、お子さんやお孫さんも遺伝子変異検査※を受けて同じ変異をもっていることが分かれば、その方の将来のがん早期発見や早期治療につなげることができるというメリットがあります。
一方で、家族間の人間関係への影響、結婚・出産への影響など、ご家族が検査結果を知ったことで悩みを抱えてしまうデメリットも考えられます。
こうしたメリット、デメリットをふまえて、ご自身の検査結果をご家族に伝えるかどうか決定し、伝えた際には検査を受けるかどうかご家族で話し合う必要があります。
これらの決定の際には考慮すべきことが多く、難しく、悩んでしまうこともあると思われます。そのような場合には、主治医に遺伝の専門家を紹介してもらい、今後の対応やご家族への伝え方などについて相談できる「遺伝カウンセリング」を受けることができます。遺伝カウンセリングは検査前後のどちらでも受けることができます。
※検査には、保険診療で受けられるものと、自費診療(保険外診療)となるものがありますので、詳しくは主治医へお尋ねください。
がん発症リスクの比較
- 1)がんの統計編集委員会編:がんの統計<2022年版>がん研究振興財団2022(2018年データ)
- 2) Petrucelli N, et al. 1998 [updated 2022]. GeneReviews®(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1247/)
BRCA遺伝子変異検査を受けて陰性だとのことですが、今後、またこのような遺伝子変異を調べる検査を受けることができますか?
血液を用いた遺伝子変異検査は、遺伝に関係している変異を検出します。生涯変わらない性質を調べているので、検査は一生に一度です。
がん組織を用いた遺伝子変異検査も一生に一度ですが、一度に100種類以上の遺伝子の変異を調べることができます。検査を受けてBRCA遺伝子変異が陰性だった場合、転移性のCRPCの個別化治療は受けられませんが、将来、現在受けている治療が効かなくなった場合に、その他の遺伝子変異の情報を治療に活かすこともできます。