前立腺がんの分類

目次

監修
群馬大学大学院医学系研究科 泌尿器科学分野
教授 鈴木 和浩 先生

分類について

前立腺がんの治療方針は、がんの大きさや広がり、悪性度、男性ホルモンへの依存性などから、その後の再発あるいは進行のリスクを判断して決定されます。

TNM分類は、がんの大きさや広がりを、前立腺に発生したがんの大きさや広がりを「T」、前立腺周辺のリンパ節へのがんの転移を「N」、前立腺から離れた臓器への遠隔転移を「M」で表すもので、リスク判断の基準の1つとなります。
また、悪性度の指標であるグリーソンスコアや、PSA値なども、リスク判断の参考にされています。また、男性ホルモンを抑えた(去勢)状態でも増殖できるかどうかも、治療選択において重要となります。

グリーソン分類(グリーソン・スコア)

がん細胞の悪性度を判断します

この分類は、米国のグリーソン博士によって提唱された、前立腺がん特有の組織異型度分類です。
最近、前立腺がんの治療法を選ぶ際に、医師がよく利用している分類法です。

まず、生検で採取したがん細胞の病理画像を使用し、がん細胞の組織構造を顕微鏡で調べて、もっとも面積の大きい組織像と、2番目に面積の大きい組織像を選びます。
次に、それぞれの組織像を1(正常な腺構造に近い)~5(もっとも悪性度が高い)までの5段階の組織分類に当てはめます。

そして、その2つの組織像のスコアを合計したものが、グリーソン・スコアになります。
グリーソン・スコアでは、もっとも悪性度の低い「2」から、もっとも悪性度の高い「10」までの9段階に分類されることになります。

グリーソン分類とグリーソンスコアの算出(イメージ*)

グリーソン分類とグリーソンスコアの算出(イメージ*)

※グリーソン分類およびグリーソンスコアの算出方法を分かりやすくするため、がん細胞の組織像および病理画像をイメージイラスト化しています。がん細胞が顕微鏡で実際に上記イメージイラストのように見えるわけではなく、実際の組織像および病理画像とは異なります。

TNM病期分類

がんの進行の程度を判断します

TNM病期分類は、「T:原発腫瘍」「N:リンパ節転移」「M:遠隔転移」によって、がんの進行度(広がり)を分類するものです。

TNM分類
T1 限局がん(偶発がん)
T1 限局がん(偶発がん)
T1:触知不能、画像診断不能
  • T1a:組織学的に切除組織の5%以下に偶発的に発見
  • T1b:組織学的に切除組織の5%をこえて偶発的に発見
  • T1c:針生検により確認
T2 限局がん
T2 限局がん
T2:前立腺に限局
  • T2a:片葉の1/2以内の進展
  • T2b:片葉の1/2をこえて広がる
  • T2c:両葉への進展
T3 局所浸潤がん
T3 局所浸潤がん
T3:前立腺被膜をこえて進展
  • T3a:被膜外へ進展
  • T3b:精嚢に浸潤
T4 周囲臓器浸潤がん
T4 周囲臓器浸潤がん
N1、M1転移がん(骨・リンパ節)
N1、M1転移がん(骨・リンパ節)
  • T4:隣接組織に固定または浸潤(膀胱頸部、外括約筋、直腸、挙筋、骨盤壁)
  • N1:所属リンパ節転移
  • M1a:所属リンパ節以外のリンパ節転移
  • M1b:骨転移
  • M1c:リンパ節、骨以外の転移